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「軍事ケインズ主義」と「道路ケインズ主義」(1

2008811

宇佐美 保

 

“それにしても、何故、米国は戦争を繰り返すのでしょうか?

そして、議員達も「権力が欲しい」といえども、何故本気で戦争を止めないのでしょうか?”

(先の拙文《悪が勝つには良い人間が何もしないだけで十分》)を続けさせて頂きます。

 

 拙文《キーワードは軍産複合体》は、次のように書き始めました。

何故、米国で911の事件が発生したり、米国はイラク侵略を行ったりするのでしょうか?

これらの現象を解く鍵は、アイゼンハワー大統領(当時)が「離任演説」にて警告を発した「軍産複合体」にあるようです。

 

そして、佐藤雅彦氏による『月刊 紙の風船爆弾(文末の補足を参照してください) 20058月号』の「日本マスコミが沈黙した米英の戦争陰謀計画」に紹介されている“「軍産複合体」批判したアイゼンハワーの離任演説」を掲げさせて頂きましたが、その一部を次に抜粋して掲げます。

 

 先般の世界戦争 (=第二次世界大戦) まで合衆国に軍需産業などというものは存在していませんでした。農具の製造業者が必要に駆られて武器を作っていたにすぎなかった。・・・我が国は途方もない規模の恒久的な軍需産業を創りだしてしまったのです。そればかりか国防関係機関に勤務している人員は今や男女あわせて三五〇万人にも達している。我が国が軍事による安全保障に毎年費やす金額は、この国の全企業の所得総額を優に超えている。・・・

 

 そして、この状態をアイゼンハワーは、次のように表現しています。

 

・・・我々が汗水たらして働き、様々な資源を投入し、
生計を立てるという暮らしの営みが、
すべてこれ(筆者注:軍事費)に絡めとられてしまっているからです。

 

 そして、「軍産複合体」による「政府の乗っ取り」、更には、「自由や民主主義の手続きの危機」への警告を発していました。

 

 ところが、拙文《ブッシュ元大統領と国防関連企業》に掲げました状態となっているのです。

この拙文の一部を抜粋いたします。

 

NHKは、衛星放送テレビ(102日)で、「イラク戦争後を担う アメリカ巨大投資会社(制作:VPRO(オランダ2003年))」という驚くべき番組を放送してくれました。

・・・

 この番組は冒頭で、NHK解説委員大島春行氏の次なる解説で始まりました。

 これは、世界的な規模でビジネスを展開しながら、その事業内容については多くの謎に包まれています巨大投資会社カーライル・グループの実態に迫ったドキュメンタリーです。

この会社は、冷戦後、経営の苦しくなった国防関連の企業を買収した上で、独自の経営ノウハウを注ぎ込んで業績を向上させるといったやり方で急成長しました。

今では、通信・航空・不動産にも投資先を広げておりまして、運用総額は160億ドルにも達すると言います。

この会社の最大の特徴はジョージ・ブッシュ元大統領ベーカー元国務長官イギリスのメイジャー元首相など世界中のリーダーが顧問格で加わっている事です。

 

 

 更に、『ぬりつぶされた真実(ジャン=シャルル・ブリザール ギヨーム・ダスキエ 共著 山本知子訳:褐カ冬社、2002910日発行)』、テレビ朝日番組「サンデープロジェクト」に於ける『ブッシュ政権と戦争利権〜失われた「大義」と副大統領疑惑〜』(2003年10月5日放送)を参照しますと、次のように纏められます。

 

投資資産管理会社カーライル・グループの投資財団
顧問 ジョージ・ブッシュ 元アメリカ大統領
ジョージ・W・ブッシュ 現大統領
取締役会 ジェームズ・A・ベーカー三世 ジョージ・ブッシュ政権時の国務長官
フランク・C・カールッチ ロナルド・レーガン大統領時代に国防長官(CIA副長官も)
リチャード・G・デーマン ジョージ・ブッシュ大統領の下で行政管理予算局長官
ジョン・スヌヌ ジョージ・ブッシュ時代のホワイトハウスの首席大統領補佐官


 そしてテレビ朝日番組中では、驚くべき事に、

コリン・パウエル国務長官までもが、このカーライル・グループと関連がある事を示唆。

アメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュは、
一九九〇年から一九九四年まで、
カーライル・グループの子会社の一つケイタレア社の取蹄役会のメンバーであった。

副大統領ディック・チェイニーからして、
石油産業関連のサービス会社では世界第二位のハリバートン社を長い間経営していた。
チェイニーは大統領選を機に同社を離れた。

 

コンドリーザ・ライスは、
シェブロン社で九年間を過ごした。
この巨大石油企業で、一九九一年から二〇〇一年一月まで社外重役を務めていた。

 

 

W・ブッシュの親友でもある商務長官ドナルド・エバンスは、
エネルギー長官のスペンサー・エイブラハムと同様に、
天然ガス及び石油を扱うトム・ブラウン社の社長として、
それまでの経歴のほとんどを石油業界に捧げてきた。

経済問題担当の商務副長官キヤサリン・クーバーは、
世界的企業エクソン社のチーフエコノミストであった。

 さらに大臣官房にも似たような経歴の者たちがたくさん見られる。

 

 

 このような経歴の方々が、自己の金銭的欲望を押さえ込んで、米国民の為、ひいては世界の人びとの為、尽くしてくれる事を期待する事は下腫の私には不可能です。

 

 そして、私が彼らの立場に居たら、「自己の欲望達成の隠れ蓑」として、何らかの「建前」を金科玉条の如くに掲げるでしょう。

 

 そして、その金科玉条を、『世界:岩波書店:20084月号』の「軍事ケインズ主義の終焉:チャルマーズ・ジョンソン 訳=川井孝子・安濃一樹(翻訳家=TUP)」の記述に私は探し出す事が出来ました。

 

即ち、軍事ケインズ主義が、アメリカの民主政治体制に深く組み込まれていると言うのです。

この軍事ケインズ主義とは、「なんとしても戦争経済を永遠に続け、軍事に金を使っていれば経済を潤すと信じるイデオロギーである」とのことです。

 

 ところが、残念なことに「しかし軍事支出は、通常経済の生産にも消費にも何ら良い影響は与えない。」とチャルマーズ・ジョンソン氏は解説しています。

 

 

 この「軍事ケインズ主義」に関する、チャルマーズ・ジョンソン氏の記述を次に掲げさせて頂きます。

 

 アメリカは、支払い能力を超えようがおかまいなしに、石油をはじめ何から何まで輸入する。これは、ただ舶来品好きというだけで済まされる話ではない。この支払いに充てるために、合衆国は莫大な借金をしている。

 二〇〇七年一一月七日、米財務省は、国家債務が史上初めて九兆ドルの大台に乗ったと発表した。債務シーリングと呼ばれる上限を議会が九兆八一五〇億ドルに引き上げてから、わずか五週間後のことだった。合衆国憲法が正式に発効した一七八九年から一九八一年まで、国家債務が一兆ドルを越えることはなかった。二〇〇一年一月にジョージ・ブッシュ大統領が就任したとき、負債額は約五兆七〇〇〇億ドルになっていた。その後、負債は四五%も増加している。この巨大な負債を生んだ最大の原因は、世界中の国々が持つ防衛予算の総額にたった一国で対抗できるまでに増大した軍事支出である(下の表参照)。


世界の軍事大国トップ10と現行予算の推定総額
1 アメリカ合衆国 6230億ドル(08年度予算)
2 中国 650億ドル(04年度)
3 ロシア 500億ドル
4 フランス 450億ドル(05年度)
5 日本 4175000万ドル(07年度)
6 ドイツ 351億ドル(03年度)
7 イタリア 282億ドル(03年度)
8 韓国 211億ドル(03年度)
9 インド 190億ドル(05年度推定)
10 サウジアラビア 180億ドル(05年度推定)
全世界の軍事支出合計 11000億ドル(04年推定)
アメリカを除く全世界合計 5000億ドル

 ここに掲げられた米国の軍事費:6230億ドルは、日本の税収に匹敵します。

しかし、これで驚いてはいけないのです。

軍事費に関しては、次のように記述されています。

 

 

〇八年度の防衛に関する支出は一兆ドル(約一〇六兆円)を超えると見込まれる。史上初めてのことだ。いまや合衆国は、他の国々に武器や軍需品を売りつける地上最大のセールスマンとなった。ブッシュ大統額が進めている二つの戦争を勘定に入れなくても、防衛支出は九〇年代半ばと比べて二倍に膨らんでいる。〇八年度の防衛予算は、第二次世界大戦が終わってから最大の規模となる。

 この莫大な予算の内訳を調べて分析にとりかかる前に、ひとつ警告しておこう。防衛費を記す数字は信用できないことで有名だ。米議会レファレンス・サービスと米議会予算局から公表される数字は一致したことがない。インディペンデント研究所で政治経済を専門とするロバート・ヒッグズ上級研究員は、次のように教えてくれる。

 「信頼できる経験則がある。ペンタゴンが(いつも鳴り物入りで)発表する基本予算の総額を見て、その二倍が本当の予算だと考えれば、ほぼ間違いない

 

 

 更に驚くべき記述を続けさせて頂きます。

 

 国防総省に関する新聞記事をいくつか選んで、ざっと目を通してみれば、防衛費に関する統計が大きく食い違っていることに気づく。防衛予算の三割から四割が「ブラック」と呼ばれる項目で、ここに極秘プロジェクト向けの支出が隠されている。いったい何が含まれているのか、支出の合計額が正確なのか、確かめる方法はない。

 防衛予算を巡って、このようなまやかしが行われるのには数多くの理由がある。大統領をはじめとして、国防長官も軍産複合体も事実を隠したがることが、まずあげられるだろう。

しかし、理由の最たるものは、上下両院の議員たちが持つ利権である。議員は自分の選挙区に、防衛関係の企業や事業を誘致して、雇用機会を増やし助成金を獲得することで、計り知れない利益を得る。国防総省を支持することが、自分たちの政治利益に直結している

 

 

 このように「防衛予算」に「上下両院の議員たちが持つ利権」が絡んでしまっては、議員達にイラク戦争への反対票を期待する事が無理である事が判ります。

その中で、23人の反対票を取り纏めたバード議員の偉大さに改めて感銘しますが、賛成は議員の思惑が、バード議員の語った「権力です、権力が欲しいのです」だけではない事が判ります。

否!議員達にとっては、「権力」と「利権」が同義語なのかもしれません。

 

 勿論、我が国の軍事費関係の予算とて同様であることを、前田哲男氏(軍事ジャーナリスト、沖縄大学客員教授)は、『週刊金曜日:2008.8.8号』に次のような前置きの下、「日本の軍事費は、本来は世界第3位か4位?」と書かれています。

 

 軍事費の正確な国際比較は難しい。各国が公表する「軍事費」の内訳がまちまちなこと、また単純にドル換算するだけでは物価水準が反映されにくいなどの事情があるからだ。

・・・

 

 その根拠として、日本では総務省の支出費目である「旧軍人恩給費」は、NATO方式では退役軍人の年金は「人件費」として軍事費に計上される。

又、海上保安庁は国際的には「準軍隊」と看做される。

更に、さらに文部科学省と独立行政法人「宇宙航空研究開発機構」の予算に振り分けられた宇宙開発経費、航空技術開発費なども合算する必要がある。

 

 となりますと、47426億円と計上されている日本の軍事費は、59230億円強となってしまうのです。

 

47426億円+恩給(8070億円)+海上保安庁(18575400万円)+宇宙開発ロケットと航空技術(18767400万円)=592302800万円=548億ドル

 

 更に、前田氏は、

“「後年度負担」という予算先取り体質が固定化している”

問題を指摘しています。

例えば、

 

 艦艇や航空機など主要装備の調達は「予算単年度主義」の例外とされ、最長五年の複数年度にまたがって支払われる。たとえば一隻七五〇億円の護衛艦の場合、初年度予算には一〇億円程度しか計上せず五年ローンで契約される。

大型装備品の購入はすべてこの方式といってよく、〇八年度の「新規後年度負担額」は一兆九三二一億円にのぼる。

そのように毎年五年先まで予算を先食いしているのだ。予算削減などできるものでない。

 

 このような「軍事費」に、議員の利権が絡んでいないとはとても信じられない事です。

 

 しかし、日本の議員にとっては「軍事費」よりも「道路関係費」「公共投資」の方が更に美味しい利権なのかもしれません。

 

 

 ここで又、チャルマーズ・ジョンソン氏の「軍事ケインズ主義」に関する記述の引用を続けさせて頂きます。

 

 

 この過剰な軍事支出は、ここ数年で発生したものでもなければ、単にブッシュ政権の政策が生み出したものでもない。

これは、まことしやかなイデオロギーに基づいて、長年にわたって積み重ねられてきたものだ。軍事支出を続ける仕組みは、もうアメリカの民主政治体制に深く組み込まれていて、いま大惨事を招こうとしている。このイデオロギーを軍事ケインズ主義と呼ぶ。なんとしても戦争経済を永遠に続け、軍事に金を使っていれば経済を潤すと信じるイデオロギーである。しかし軍事支出は、通常経済の生産にも消費にも何ら良い影響は与えない

 

 

 ここでの記述では、熊しか通らない高速道路や、災害時の非難道路として役立つ可能性があるという高速道路(“宮崎みたいな海岸沿いの道路が津波の避難に役立つはずはない!”とジャーナリストの田岡俊二氏は非難していました)と言った具合に、「通常経済の生産にも消費にも何ら良い影響は与えない」道路、又、役にもたたず、運用経費も出ない赤字を産むことしか出来ない箱物を永遠に造り続ければ、「経済を潤すと信じる」日本と酷似しています。

ですから、

日本の議員達は大好きな外遊に行くたびに
道路ケインズ主義」とか「公共投資ケインズ主義」という
日本独自の「経済理論」を世界に吹聴し、自慢すべきです。
(そして、嘲笑されるべきです!)

しかし、私達(特に次世代の)日本人にとっては笑い事ではありません!

 

 

 こんな「軍事ケインズ主義」は、まともな米国人からは支持されなかった筈です。

ただ「軍事ケインズ主義」の恩恵に与る事が出来る一部の金持ち達に支持され、その一部の人達が米国政治をリードして来てしまったのでしょう。

(そして、彼らは、今も、充分な恩恵を受け続けているのでしょう)

 

 

 更に、チャルマーズ・ジョンソン氏の記述を続けさせて頂きます。

 

 

 このイデオロギーの誕生は冷戦の初期にさかのぼる。

一九四〇年代後半、合衆国は経済の先行きを悲観していた。一九三〇年代の大恐慌は第二次世界大戦の特需という僥倖で切り抜けたが、平和の訪れと兵士の帰還につれて、恐慌の再来に対する不安が広がってゆく。一九四九年にはソ連が核実験に成功し、中国共産党が内戦での勝利を目前にしていた。さらに国内の不景気に加えて、ソ連の衛星国が結束し東欧に鉄のカーテンが降ろされた。危機感を募らせた合衆国は、来るべき冷戦に備えて、基本戦略の策定を模索する。

 こうして、国務省の政策企画室長だったポール・ニッツを中心に、軍国主義的な国家安全保障会議報告書六八(NSC68)が作成された。一九五〇年四月一四日付で報告書は提出され、同年930日にハリー・トルーマン大統領が署名している。この文書が、今日まで続く公共経済政策の根幹を決定した

 NSC68は結論で次のように述べている。

 「アメリカ経済は、効率を十分に高めれば、民間消費以外の目的にも膨大なリソースを提供することが可能であり、同時に高い生活水準も維持できる。これが第二次世界大戦の経験から得た最も重要な教訓のひとつである

 

 

 いわゆる「軍事ケインズ主義」が「第二次世界大戦の経験から得た最も重要な教訓のひとつである」とは、本土が戦火に晒されなかった米国に居て、戦場の悲惨さにも遭遇しなかった、又、今後も、戦場に赴く事もないであろう頭の良い方々の「頭の中の教訓」だったのではありませんか!

(「頭の中の(とんでもない)教訓」が「最も重要な教訓」となるなんて!与太話としか思えません)

 

 

 更に引用を続けさせて頂きます。

 

 

 この結論に基づき、アメリカの戦略担当者たちは、大規模な軍需産業の構築に向けて舵を切った。目的は、(常に過大評価していた)ソ連の軍事力に対抗すること、完全雇用を実現すること、そして経済恐慌の再来を回避することだった。その結果、ペンタゴンの主導で、大型航空機・原子力潜水艦・核弾頭・大陸間弾道ミサイル・監視衛星および通信衛星などを製造する新しい産業が続々と生まれた。この変貌を目の当たりにしたアイゼンハワー大統領は、一九六一年二月六日の退任演説で、こう警告している。「巨大な軍隊と大規模な軍需産業が結合した。アメリカが、かつて経験したことのない出来事だ」。軍産複合体の台頭である。

 

 

 ご自身で第2次大戦中、「ノルマンディー上陸作戦」の連合軍最高司令官などを体験する中、戦争の悲惨さを実感している(であろう)「アイゼンハワー大統領」は、このように「軍産複合体の台頭」に危惧を抱かれたのだと存じます。

 

 

 そして、次なる記述には、又、ビックリです。

 

 

一九九〇年には、
武器と機器と軍需専業工場が持つ資産価値の合計は、
アメリカ製造業全体が有する資産価値の八三%を占めるようになる。
一九四七年から一九九〇年までの軍事予算は累計八兆七〇〇〇億ドルだった。
ソ連が崩壊した後も、軍事ケインズ主義への信奉はむしろ強くなったろう

軍の内外に既得権益が網の目のように張り巡らされているからだ。

 

 

 このような愚行は、「欲の皮で目が塞がれた人々」(ドル紙幣しか目に映らない人々)の仕業としか考えられません。

(日本でも、このような方々が、「道路は絶対に必要だ!」と喚いているかもしれません)

 

 

 次は、「軍事ケインズ主義が、死に至る自殺行為に他ならない」との経済学者ディーン・ベイカー氏の研究論文に関する記述です。

 

 

 政府は、軍需産業と民需産業をともに発展させるつもりでいた。だが、この計画は、時とともに脆くも崩れ去る。軍需産業が民需産業を圧倒してしまったために、アメリカ経済は深刻な弱体化に陥った。軍事ケインズ主義を信奉することは、経済にとって、ゆっくりと死に至る自殺行為に他ならない。

 二〇〇七年五月一日、首都ワシントンにある経済政策研究センターは、軍事支出の増加が経済に及ぼす長期的な影響について、ある研究論文を発表した。この論文は、同研究センターが、経済予測を専門とするグローバル・インサイト社に委託した調査の報告書で、研究の中心となったのは経済学者ディーン・ベイカーである。

 論文によると、軍事支出の伸びは当初こそ需要を刺激する効果をもたらすが、その効果は長く続かず六年もすればマイナスに転じる。言うまでもなく、アメリカ経済は、過去六〇年以上にわたり、増え続ける軍事支出に苛まれてきた。ベイカー博士は、高い軍事支出を一〇年間つづける経済モデルを作り、軍事支出を低く抑えた基本モデルと比較している。

その結果、前者は後者よりも、雇用が四六万四〇〇〇件も少なくなることが分かった。

 ベイカーはこう結論する。

 「戦争が起こり軍事支出が増えれば、経済が活性化すると一般に考えられている。しかし実際には、ほとんどの経済モデルが示すように、軍事支出が増加すると、消費や投資などの生産的な目的に使われるべきリソースが軍事産業に流れ、結局は経済成長が鈍り雇用が減る」

これは軍事ケインズ主義の悪しき影響の一端にすぎない。

 

 

「投資の価値」は、「投資」による「第1次の効果」が「第2次の効果」を生み、
この効果が、又「次の効果を生む」との新しい効果が連鎖的に続く
効果の連鎖反応」で評価されるべきです

(落語の「風が吹けば桶屋が儲かる」は悪い連鎖ともいえますが、良い連鎖が不可欠です)

 

 鉄砲、大砲、戦車、戦闘機、核兵器・・・こんな役にもたたないもの造ったって、その効果は次に引き継がれません。

経済が発展するわけはありません。

確かに、それらの軍事工場に雇われた人は、給金を手にしますが、それだったら、軍事工場で働かずとも、その給金を無料で(悪名高かった「地域振興券」のように)配った方が効果的です。

(軍事工場で働くべき時間に、他の仕事を遂行できるのですから)

 しかし、「鉄砲、大砲、戦車、戦闘機、核兵器・・・」が「次の効果を生む!」と言って、それらを振りかざしながら攻め込まれるイラクなどの国民は堪ったものではありません。

(となりますと、やはり、その方々は、イラクの石油等の利権獲得が目的で攻め入ったのでしょうか!?)

 

 

 私には、「軍事ケインズ主義」などは経済理論ではなく「利権屋の隠れ蓑」にしか思えません。

 日本もこの際、「道路ケインズ主義」とか「公共投資ケインズ主義」の無効性をはっきりと論表して、「利権屋の隠れ蓑」を透明化して、隠れる事が不可能な蓑とすべきと存じます。

 

 余り長くなりましたので、次は《「軍事ケインズ主義」と「道路ケインズ主義」(2)》に引き継がせて頂きたく存じます。

 


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